◆[教育現場から]給食に「三宅のお米の日」を! 三宅小学校栄養教諭・采女(うねめ)先生インタビュー
三宅小学校で栄養教諭をつとめる采女先生。学校給食での「地産地消」をはじめ、食を通した教育に力を注ぎ、今回の取り組みの発案者の一人です。そんな采女先生に、三宅町での取り組みや、子どもに対する食育の意義についてインタビューしました。
○この取り組みが始まったきっかけについて教えてください。
もともと、地産地消で奈良県産の食材を提供しようというのは献立をたてる上で考えていて、三宅で育った子たちに三宅のものを食べてほしいなと思いました。特にお米は、これだけ周りに田んぼがあるのに、子どもたちの口に入らないのはもったいないというお話もあり、産業振興課さんに相談していました。今では給食の中で、週に三度あるお米を食べる日のうちの1日を、「三宅のお米の日」にして、提供しています。その日は、給食委員の子たちと相談して、「三宅のお米の日」だとわかるようにお米の歌を流しています。今ではだいぶ浸透してきて、「今日は(生産者の)畑中さんのお米の日や」と、その日を楽しみにしている子もいます。私はそれが理想だなと思っていて。地域の誰かが作ったものだと意識すると、食べ方も変わってくると思うんです。
先日、給食でとうもろこしを出したんです。三宅に住んでいる農家の伊藤さんが作られたものなのですが、それも「伊藤さんのとうもろこし」だと伝えることで、誰かが作ったものだと意識できるようにしました。子どもたちにできるだけ地産地消の良さを伝えています。
○それはここ最近の取り組みですか?
5年前くらいから、直接農家の方に農地を見せてもらい、その写真を撮って子どもたちに見せて、どう育っているのかを伝えるなど、コツコツやってきました。今は農家さんと直接お話しする機会もあります。農家さんは、小学校に納品する農作物なら形がきれいな野菜でないといけない、とハードルが高いと思われる方も多いですが、形の善し悪しは問題にならないなどの説明をすると、子どもたちのためにぜひ!と言ってくださる方もいて。あとは、「こういう献立で出しています」などをこちらからもお話しています。そういう関係ができるようになったのが、ようやくここ1、2年のことですね。
○その流れの中で今年は初めて、田植え体験と稲刈り見学を行った訳ですね。
お米に限らず、子どもたちが収穫して、それをそのまま食べるみたいなことがしたかったんです。自分が子どもの頃に田植え体験をして楽しかった記憶があって、最近でこそだいぶ機械化が進んでいますが、お米を作るのは大変なんだなということを身体で感じられるかな、と。三宅の子どもたちって、これだけ田んぼや畑に囲まれているのに、土を触る、踏む機会がなかなかないんです。田植えの体験することで、通学路でも稲が大きくなってるなとか、花が咲いてるなとか、少しでもわかるようになれば、普段の住んでる町が少し違って見えますよね。(体験させてもらった)田んぼは学校から近くて、田植えをした3、4年生も「先生!大きくなってたで」とか「今日放課後見に行こうぜ」とか言ってくれるようになりました。収穫したお米は、年末年始くらいには給食に出す予定なので、すごく楽しみです。
今回は、植えてから収穫までの間の管理は農家の方にお願いしていたので、「植えました」、「大きくなってきました」、「穂がつきました」…みたいな途中の成長過程だったり、生産者の畑中さんの想いだったりを、お米を食べる時には伝える取り組みもできたらと考えています。まだ1年目なので、来年度以降こうしたいみたいなことも出てきていますね。
○三宅町だからこそできる食育というのはありますか?
この規模の自治体だからこそ小回りよくできていることがたくさんあると思います。他の市町村の栄養教諭の方には、町長や教育長と直接話せることなんてなかなかないと言われます。だからこそやりがいはすごくありますが、一方で何かあった時の責任も重大だと思っています。直接子どもの口に入るものなので、そこは責任感をもちながらですね。今はセンター給食(町内の1か所で作って、各学校に運ばれてくる形)の自治体も多いので、直接子どもたちの声も聴こえづらい。だから、三宅小学校で直接子どもたちの声を聴けるのはいいなと思っています。
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